スズキ車で“全長5.6 m級”! 250馬力超え「V6」搭載の「ビッグモデル」! 5人乗れる広々内装&MT設定もイイ! まさかの本格モデル「米のイクエーター」とは
軽自動車などコンパクトなクルマのイメージが強い「スズキ」ですが、大柄なボディを持つトラックも販売していました。それが「イクエーター」というモデルです。
スズキに全長5.6mの巨大トラックがあった!?
スズキのピックアップトラックと聞くと、多くの人は、1983年から1988年まで販売されていた軽商用車の「マイティボーイ」を思い浮かべるのではないでしょうか。

なおピックアップトラックとは、車体前半分がセダンのようにボンネットとキャビン、後半分が荷台となっている貨物自動車のこと。
スズキではこのマイティボーイの他に、初代と2代目に設定された「ジムニー」のピックアップや、スズキが製作したピックアップトラックのコンセプトカーでその姿を見ることができますが、おおむね、軽自動車やそれをベースにした「小さなピックアップトラック」ばかりです。
ところがスズキには、「これがスズキのピックアップトラック!? というか、これもスズキのクルマなのか!」と目を疑いたくなるほど巨大なピックアップトラックが存在しました。
それが北米市場で2008年から2012年まで販売されていた「イクエーター(EQUATOR)」です。
イクエーターは全約5.25m、全幅1.85mという巨躯を誇るピックアップトラック。4ドア型の「クルーキャブ・ロングベッド」モデル(5人乗り)の全長はさらに長く、約5.6mに達します。
日本で発売中のピックアップトラックであるトヨタ「ハイラックス」および三菱「トライトン」の全長は、5.3m台。両車とも日本ではかなりの巨体ですので、イクエーターの大きさがわかるかと思います。
強靭なラダーフレームに搭載されたエンジンは日産製の2.5リッター直列4気筒「QR25DE」型と、同じく日産製の4リッターV型6気筒「VQ40DE」型で、それぞれ152hpと261hpを発生。
前者には5速マニュアルトランスミッションもしくは5速オートマチックトランスミッションと後輪駆動、後者には5速オートマチックトランスミッションを組み合わせ、後輪駆動と4WDを選ぶことができました。
「小型車作りが得意なスズキが、こんなに大きなピックアップトラックを開発するノウハウはあるのだろうか」と考えた人や、搭載エンジンのメーカーで気づいた人も多いと思いますが、イクエーターは日産のピックアップトラック、2代目「フロンティア」のスズキ版でした。
生産自体もフロンティアと同じく、テネシー州の日産スマーナ工場で行われ、スズキのエンブレムをつけて出荷されていました。しかし単なるバッヂ変えのクルマではなく、フロント部のデザインを大きく変更しており、パッと見る限りではフロンティアの兄弟モデルというイメージは薄れていました。
なお北米市場では、全長5.8m〜6mオーバー・全幅2mオーバーという巨体に5リッター超のV8エンジンを載せた「フルサイズピックアップ」というクラスが存在。日産では「タイタン」、トヨタでは「タンドラ」をラインナップしており、どちらも好調なセールスを記録しています。
しかも北米における年間販売台数では、フォードのフルサイズピックアップ「Fシリーズ」が40年以上も首位をマークしているというのですから、日本の常識では考えられない北米市場の壮大さを感じることができます。
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イクエーターは1世代限り・約4年で販売を終えましたが、その理由は2012年にスズキが北米市場から撤退したためでした。イクエーターの販売台数は決して多くありませんでしたが、「スズキエンブレムを有する巨大ピックアップトラック」という極めて個性的なモデルだっただけに、その際立つ存在は今後も語られていくことは間違いありません。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
10年以上前のお話。誰も食いつかん。