パナソニックがクルマの「移ごこち」をデザインする? オートモーティブ事業で提供する新たな空間価値とは
自動車業界が100年に1度の大変革期を迎える中、パナソニックオートモーティブシステムズが掲げる新たなビジョンと戦略について、メディア向けの説明会がおこなわれました。同社では、自動車の「走る・曲がる・止まる」という基本性能を超えた新たな価値創造に向けてさまざまな取り組みがおこなわれています。
80年以上の歴史から生まれた新たなビジョン
2025年6月3日、パナソニックオートモーティブシステムズが都内でメディア向けの戦略説明会を開催し、永易正吏社長が新しいビジョンや今後の経営戦略について発表をおこないました。
パナソニックの自動車事業への関わりの歴史は1939(昭和14)年、天皇皇后両陛下が乗車されるお召し自動車用のカーラジオを開発・納入したことから始まり、それ以降創業者である松下幸之助の理念を軸に、80年以上にわたって自動車事業と関わりを続けてきました。
その後、2003年にパナソニックグループの社内分社としてパナソニックオートモーティブシステムズ社が発足。カーナビをはじめとする数々の商品を世に送り出すことで順調に事業規模を拡大し、近年は1兆円を超える売り上げ規模の企業となっています。

パナソニックオートモーティブシステムズの事業は、コックピット周りを担当する「インフォテインメントシステム事業」と、車内空間全体をデザインする「モビリティUX事業」の2つが軸となっています。インフォテインメントシステム事業では、コックピット統合ソリューションなど、クルマのSDV(Software-Defined Vehicle)化を見据えた次世代のインフォテインメント機器を展開しています。
モビリティUX事業では、ヘッドアップディスプレイやプレミアムサウンドシステムなど、車内を快適な移動空間にする製品を提供しています。主要商品の中にはグローバルトップクラスの商品もあり、例えばディスプレイオーディオでは世界1位、IVIシステム(インフォメーションとエンターテインメントの提供を担うシステムの総称)では世界2位のシェア(※)を持っているとのことです。(※出典:富士キメラ総研「車載電装デバイス&コンポーネンツ総調査 2024 (上巻) <システム/デバイス編>)
2023年、パナソニックオートモーティブシステムズは米国資産運用会社Apollo(アポロ)とのパートナーシップに基本合意し、2024年12月には資本構成をアポロ80%、パナソニックホールディングス20%という新体制に移行しました。本パートナーシップについて永易社長は「当社はこの戦略的パートナーシップをもとにアポロの知見を大いに活用しながら、パナソニックグループにとらわれない思い切った経営改革を行い、新たなる成長を目指します」と話します。
2024年にパナソニックオートモーティブシステムズは、従来のビジョンをアップデートし“世界一の「移ごこちデザイン」カンパニー”を会社が目指す姿として策定しました。ここでいう「移ごこち」とは、自動車での移動の「心地よさ」を意味しており、安心安全はもちろんのこと、移動体験に価値をもたらす空間をデザインする企業を目指しているとのことです。
また昨今、自動車業界の重要なトレンドの一つが「クルマの知能化」です。AIや自動認識、音声認識技術の進化により、自動車は単なる移動手段を超えて、ユーザーと対話できるパートナーへと変わりつつあります。
パナソニックオートモーティブシステムズは、このような自動車の知能化に伴い、SDV化が進展し、車載ソフトウエア開発規模が飛躍的に大きくなってくると予想しています。またもうひとつの重要なトレンドが「多様化」です。自動運転の登場によって運転形態の多様化や運転環境の変化が起こり始めており、高齢化によるドライバー年齢層の変化やカーシェアリングなど所有にとらわれない使用形態の広がりも見られます。
このような知能化や多様化といった市場トレンドにより、自動車の差異化ポイントは従来の「走る・曲がる・止まる」といった走行性能から変化。移動時の体験価値や快適な車内空間を求めるニーズが高まり、いわゆるUX(ユーザーエクスペリエンス)価値の向上が新たな差異化ポイントとなってくるとパナソニックオートモーティブシステムズは分析しています。
永易社長は「これらの状況に対して当社は、今まで培ってきた、暮らし・人に寄り添う技術を生かし、コックピット領域と車内空間で心地よい移動を作り出すことに貢献します」と述べています。
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